cjc | 8月号-4
 
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22年度調査研究紹介

オフィスビルにおける廃棄物処理・リサイクルシステムに関する調査研究(社団法人 日本機械工業連合会委託事業)(競輪補助事業)

 先進的なオフィスビルにおいて廃棄物処理・リサイクルを効果的に実施するために設置された設備、システム並びにオフィスビルの所有者等が実施している取り組みや設備、システムに対するニーズ等をアンケートとオフィスビル訪問調査を行い、効果的な廃棄物処理・リサイクルシステムの有り方を検討しました。

 1. オフィスビルで使用される機器・設備

 ①縦搬送設備、②ごみ圧縮設備、③プラスチック破砕機とペットボトル・空き缶圧縮梱包設備、④発泡スチロールの減容設備、⑤生ごみ乾燥設備、⑥ごみ計量器、⑦シュレッダー、⑧その他(冷蔵庫等)

 2. オフィスビルにおける廃棄物処理・リサイクルシステムに関する課題の整理

(1) 多くの自治体は排出源での資源分別により可燃ごみ・不燃ごみの量を削減することを求めており、オフィスビルにおいても排出源で資源を細分別しリサイクルルートに乗せる取組が一般化しています。一方で、ビルの計画段階では、保管スペースも含めてごみ処理関連設備が機能的に確保・配置されない事例が見られます。自治体の要求に対して細分別を行う場合も、十分なスペースが確保できず、たとえば駐車場の一角をつぶしてこうしたスペースに割り当てるなどの対策を講じる例もあります。

(2) 自治体による排出源分別方針もあり、オフィスビルとしてリサイクル率などの目標を掲げてごみ減量・リサイクルに取り組むことが今後、一般的な流れになると考えられます。こうした中、テナント、特に店舗系テナントで資源分別が徹底できないとの意見が多く聞かれました。業態として不特定多数が出入りする店舗の場合、分別徹底は容易ではないが、たとえば自治体と連携して優良事例に関する取組情報を入手するなどの対策が求められます。

(3) オフィスビルにおけるごみ処理は、現状では清掃作業員が人的に対応しているのが一般的です。資源品目を細分別するオフィスビルも多く、これに設備的に対応するのは困難と考えられます。高層ビルでフロア面積が大きく、かつフロア人口の多いオフィスビルの場合、エレベータの稼働率の制約からエレベータより縦搬送設備でごみを運搬する事例がありました。階数が増し延床面積が広くなるほどごみ運搬専用の縦搬送設備のメリットが出てくると考えられます。

(4) オフィスビルにおいてはこれまで様々な設備・機器が導入されてきましたが、現在では計量器に加え、飲食店系テナントがある場合には生ごみ用冷蔵設備に、エレベータ等の搬送能力に制約がある場合には縦搬送設備に集約されてきています。たとえば、管路輸送設備や貯留機などの設備は混合排出、多量排出が前提となっており、現状の排出源細分別の動向にマッチしていません。

 3. オフィスビルに求められる効果的な廃棄物処理・リサイクルシステムのあり方

(1) 自治体の指導等から排出源での資源の細分別が一般化しており、オフィスビルとしてリサイクル率目標を定め、ビル全体でリサイクルの取組を進める事例も見られ、CSR などの環境配慮の取組がオフィスビルにも拡大してきています。今後はますますこうした動きが広がると考えられます。

(2) 従来のように、分別数が少なく、一区分のごみ量が比較的多い場合は設備・機器を導入することで効率的な処理が期待できましたが、現在では排出源細分別が一般化しています。排出されるごみは多品種少量となっており、設備的にビル内処理している事例は見られませんでした。

 新たなリサイクル技術の開発等外的要因により分別区分は変更となることが想定されるため、設備・機器の導入はオフィスビル側にとってリスクとなる恐れがあります。導入する設備・機器を最小限に抑え、人的に対応することが当面の流れと考えられます。

(3) 生ごみの臭いをシャットアウトすることはビル内の良好な環境を保持することに寄与するだけでなく、ごみ集積所内を清潔に保つことができ、これによってごみを持ち込むテナントに「適正な排出」を促す効果も期待できます。生ごみ冷蔵設備は今後の標準形といえます。

(4) 地球温暖化対策として、オフィスビル全体でエネルギーを含む総合的な環境管理システムを導入する事例が出始めています。こうした取組の一部としてごみ排出量(データ)の収集・管理があり、計量設備がその一翼を担うことになります。

 4. これからのオフィスビルで考えられる廃棄物処理・リサイクル設備

 現在のオフィスビルでは、ごみ計量器(計量システム)など一部の設備・機器を除き、原則として人的に対応しています。その背景には自治体による排出源細分別と資源化促進への誘導があり、これに柔軟に対応するために設備に頼らず人的に対応することが選択されています。オフィスビルとしても今後はリサイクル率の向上を目指すところが増すと想定され、そのためには、次のような設備・機器の開発が期待されます。

  • ミックスペーパーのリサイクル性向上のための選別装置
  • シュレッダー用紙のリサイクル性向上のための異物除去装置
  • 弁当ガラリサイクルのための生ごみ除去・乾燥装置
  • 小型縦搬送設備(少量多分別に対応)
22年度調査研究紹介

リサイクルによる低炭素化社会形成の促進に関する調査研究(競輪補助事業)

 1. 調査研究の目的

 リサイクルは、化石エネルギー資源や鉱物資源など天然資源の消費を抑制して温室効果ガスの排出を低減し、低炭素化社会の構築に寄与する有力な手段です。しかし、リサイクルを行った結果、温室効果ガスの削減、即ち、低炭素化にどれだけ貢献するのか実施者に見えないことが多く、温室効果ガス排出抑制・低炭素化社会の形成の側面からリサイクルを推進するというインセンティブが働きにくい状況にあります。このような状況を解消し、従来の資源の有効利用に加えて低炭素化社会形成の促進の観点からもリサイクルの推進を図るために、リサイクルによる温室効果ガス排出抑制効果及び今後のリサイクルの進展により期待できる温室効果ガスの排出抑制効果をLCA手法に準拠して調査研究しました。

 2. 調査研究結果(概要)

(1) 対象製品

 アルミニウム、銅(電気銅・伸銅品)、鉄鋼、紙、プラスチック、ガラスびん、セメント

(2) リサイクルによる温室効果ガス排出抑制効果の考え方

 「再生資源を原材料として生産された製品(再生資源製品)」は、同種の「天然資源を原材料として生産される製品(天然資源製品)」の生産を回避し、代替しています。代替量は、「再生資源を原材料として生産された製品」の生産量に代替率を乗じることにより求められます(図1)。代替率は、金属・ガラスびん・紙は1、プラスチックは0.3~1程度です。

 このように考えるとリサイクルによる温室効果ガス排出抑制効果(GHGr)は、式(1)又は式(2)で求めらます。

GHGr=Rp(s×En-Er)      (1)

GHGr=Ri×Yr(s×En-Er)    (2)

ただし、GHGr:リサイクルによる温室効果ガス排出抑制効果

その他:図1参照

(3)リサイクルによる温室効果ガス排出抑制効果の試算結果(アルミニウムの事例)

①効果算出モデル

 輸入新地金(天然資源製品)の温室効果ガス排出量と再生地金(再生資源製品)の温室効果ガス排出量の差をリサイクルによる温室効果ガス排出抑制効果と考えました(図2)。

②使用データ

新地金のLCI(En:天然資源工程温室効果ガス原単位):

 日本アルミニウム協会「アルミニウム新地金および展伸材用再生地金のLCI データの概要」(2005 年3 月23 日)に基づいて、LCIデータを整理しました(表1)。

再生地金のLCI(Er:再生資源工程温室効果ガス原単位):

 再生地金のLCIは公開されていないので、日本アルミニウム協会LCA 調査委員会「スクラップ溶解のインベントリ調査報告書」(2007年9月)のLCIが再生地金のLCIを代表すると考え、データを整理しました(表1)。

アルミニウムのリサイクル量(Ri:再生資源投入量):

 1,329千t(2008年)。この数字はJOGMEC「アルミニウムのマテリアルフロー(2008年)」から引用しました。

表1 製品1kg当たりのLCI データ

再生資源工程
(製品:再生地金)
天然資源工程
(製品:輸入新地金)
資源投入量Ri:
アルミニウムスクラップ 1.039 kg-Sc
Ni:
ボーキサイト 5.168 kg
製品量1kg1kg
歩留Yr:
0.96 kg-Al/kg-Sc
温室効果ガス
(CO2)排出原単位
Er:
0.287 kg-CO2/kg-Al
En:
9.218 kg-CO2/kg-Al

注釈) Sc:アルミニウムスクラップを意味する。

 Al :アルミニウム地金を意味する。

③アルミニウムスクラップのリサイクルによるCO2排出削減効果の試算結果

 式(2)に、スクラップリサイクル量(2008 年)及び表1 の各値を代入することで求めることができます。s =1です。

GHGr=Ri×Yr(s×En-Er)

=1,329 千t-Sc /年 × 0.96 kg-Al/kg-Sc ×(9.218-0.287)kg-CO2/kg-Al

=11,395 千t-CO2/年 (2008年)

※アルミニウムスクラップの収集・運搬、前処理に伴う二酸化炭素増加は考慮していない。

図1 再生資源製品による天然資源製品の代替の概念
図1 再生資源製品による天然資源製品の代替の概念

図2 アルミニウムのライフサイクルフロー(モデル)
図2 アルミニウムのライフサイクルフロー(モデル)



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