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CJCトピックス

平成23年度リサイクル技術開発本多賞(第16回)表彰式

 リサイクル技術開発本多賞は、長年廃棄物リサイクルの分野に携わってこられた故本多淳裕先生(元大阪市立大学工学部教授、元(財)クリーン・ジャパン・センター参与)のご厚意に基づき、リサイクル技術開発に従事する研究者・技術者等への研究奨励を目的として平成8年度に創設されたものです。

 平成23年度リサイクル技術開発本多賞には、研究報文4件及び技術報文1件の計5件の応募があり、その中から下記の研究報文2件が選定されました。平成24年1月25日(水)阪急グランドビル(大阪)で表彰式が行われました。受賞報文の概要は以下のとおりです。

第16回リサイクル技術開発本多賞 受賞テーマ概要
1. 研究報文

Studies on Bromination and Evaporation of Zinc Oxide during Thermal Treatment with TBBPA

(TBBPAの熱処理による酸化亜鉛の臭素化と揮発に関する研究)

グループ代表 中村 崇 氏  東北大学 多元物質科学研究所

 プラスチックや電子基板は難燃性を保つため臭素系難燃剤が使用されています。EUにおけるRoHs指令により臭素系難燃剤の禁止が出されましたが、完全に規制することはできず、TBBPA などいくつかの難燃剤は使用が認められています。特にTBBPAがもっとも多く使用されています。最近注目されている小型廃電気・電子機器のリサイクルにおいて銅や貴金属、またレアメタルの回収が注目されていますが、小型廃電気・電子機器でもっとも嵩、重量ともに多いのは、基板も含めプラスチック部分であり、小型廃電気・電子機器のリサイクルを総合的に行うためには、プラスチックのリサイクルが重要です。

 難燃剤含有プラスチックのリサイクルは容易でなく、廃プラスチックの大きな課題の一つです。本論文では、臭素系難燃剤含有プラスチックの効率よいリサイクルを目指し、TBBPAと金属酸化物がどのように反応するかを基礎的に調べたものです。具体的にTBBPAと酸化亜鉛との反応を調べ、400℃くらいから酸化亜鉛の臭化反応によりZnBrが生成し、500℃以上で揮発すること及びその課程でどのような有機化合物が揮発するかを明らかにしました。この基礎研究は現在電気炉ダストの処理に応用されることとなり、パイロットプラントが計画されています。またその後、他の金属酸化物との反応を系統的に調べ、電子基板のリサイクルにおいても、この基礎研究は重要な知見を与えました。

受賞した基礎技術論文を基に提案された臭素系難燃剤含有プラスチックによる金属回収プロセス

受賞した基礎技術論文を基に提案された臭素系難燃剤含有プラスチックによる金属回収プロセス

2. 研究報文

High Gradient Superconducting Magnetic Separation for Iron Removal from the Glass Polishing Waste

(超電導高勾配磁気分離法によるガラス研磨廃棄物からの鉄系成分の除去)

グループ代表 西嶋 茂宏 氏  大阪大学大学院工学研究科 環境・エネルギー工学専攻

 使用済ガラス研磨剤である酸化セリウムを再利用するため、高勾配磁気分離法と磁気アルキメデス法を併用することで再生が可能であることを示した論文です。

 液晶パネルやガラス等の研磨用酸化セリウムは、ほとんどを輸入に頼っており、近年、その入手が困難になっています。このため、使用済研磨剤の再生の手法を開発することが当該分野で重要な開発事項となっています。またこの手法の確立は環境負荷の低減に大きく寄与すると期待されています。

 研磨用酸化セリウムは水に懸濁されて使用され、研磨後においては、排水処理プロセスで処理されます。処理された使用済酸化セリウムはガラス研磨屑とともに凝集剤(鉄系凝集剤)で凝集した形態で存在しています。酸化セリウムを再利用するためには、鉄系化合物粒子との付着を解消するとともに、それを除去する必要があります。本研究では、pH 調整によって凝集したスラッジを分散させるとともに、超電導磁石を用いた高勾配磁気分離法によって、鉄系化合物粒子を除去しました。分離のための最適条件を、計算とモデル実験によって検討しました。さらに、鉄系化合物粒子分離後の溶液からガラス研磨屑(シリカ粒子)を分離し、酸化セリウムの回収を実現するため、磁気アルキメデス法を利用し、高効率な回収を実現しました。

 なお、凝集剤の種類によってはアルミナ粒子が混入しますが、磁気アルキメデス法で分離可能であることも実証しています。この研究によって、酸化セリウム粒子を研磨剤として再利用できる可能性が示されました。

 当該研究の成果を基にガラス研磨廃液からの酸化セリウムの回収について、株式会社マエダマテリアルと共に独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の希少金属代替・削減技術実用化開発助成事業に申請し、2011年に採択されています。

使用済み研摩廃材からの酸化セリウム回収フロー図

①ph調整を行い、試料の分散を行う。

②超電導高勾配磁気分離により鉄の分離を行う。

③鉄を除去した試料に常磁性作業媒体(塩化マンガン)を加え混合する。

④超電導磁石で磁気アルキメデス分離を行い、シリカ、アルミナを浮上分離させて、酸化セリウムを回収する。

使用済み研摩廃材からの酸化セリウム回収フロー図



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