cjc | 6月号-3
 
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平成18年度調査研究報告
<高度溶剤リサイクルシステムの形成に関する調査>(競輪補助事業)

1.調査の背景
 近年浮遊粒子(SPM)及び光化学オキシダントの原因物質として揮発性有機化合物(VOC)が問題となり、その排出抑制への取組が注目されています。
  年間約230万トンの溶剤使用量のうち約半分の130万トンがVOCとして大気に放散されています。残り約100万トンは焼却処理されており、プラント内で再利用されている量は明らかではありませんが、オフサイトで溶剤再生事業者によって再資源化されている量は年間約20万トン程度にすぎないと言われています。
  我々は溶剤の回収・リサイクルに注目し
(1)溶剤はどの様に使われているのか
(2)それらを回収、リサイクルする上で問題点は何か
(3)すでに回収・リサイクルで成果を上げている事例
(4)関係者の関心はどこにあるのか
(5)関係異業種間の協力関係を構築すれば進捗できる事例がないかについてヒアリングして関係業界の状況を取りまとめました。

2.溶剤の種類と使用量の調査
 溶剤の化学構造による類別と構成比を図1に、主な溶剤の使用量を表1に示す。炭化水素系が約4割を占め、物質名ではトルエン、キシレン、酢酸エチル、ターペン、メタノール、IPA、MEKが多く使われている。
  溶剤は多くの用途に使われており、主な用途の構成比を図2に示す。用途として塗料・塗装が最も大きく、約48万t、次いでインキ・印刷に20万t、洗浄剤19万t、接着剤9万t、粘着テープ11万t、ラミネート5万tであった。 

3.分野別溶剤の使用状況とリサイクル上の課題
 主な業界に溶剤使用の現状とリサイクルを行う上での問題点をヒアリングした。
(1)塗料・塗装分野
  全溶剤使用量の約20%を占めている。塗料製造工程からの溶剤排出は比較的少ないが、製品塗料中の約55%を溶剤が占め、更にシンナーで希釈して塗装に使用される。塗装ブース・乾燥ブース排気の処理と塗装器具の洗浄に使う溶剤の削減が焦点である。
(2)印刷、接着、粘着、ラミネート分野
  オフセット印刷、出版グラビア印刷、特殊グラビア印刷の3分野が印刷業界の溶剤使用量の大半を占めている。オフセット印刷(本・書籍の印刷)では悪臭防止対策として95%程度の乾燥ボックスに燃焼処理装置が設置されているが、回収・再資源化に向けての課題が残っている。
  出版グラビア印刷(通販カタログ、雑誌などの印刷)は使用溶剤がトルエン単一のため、リサイクル率は100%達成済みである。経済性の面でも効果を上げている。
  特殊グラビア印刷(軟包装印刷)ではトルエン、酢酸エチル、MEK、IPA等の混合溶剤が使用され、混合溶剤のため、濃縮・回収プロセスまでは対応出来るとしても、その後の再生品の使い道及び成分分離等に課題を有している。
  ラミネートは食品パッケージ等の軟包装貼り合わせフィルムを作る工程で印刷工程と繋がって運転されている場合が多い。ここでも混合溶剤が使われ、その回収、処理に苦慮している。
(3)洗浄分野
  高沸点炭化水素系洗浄剤が多く使われている。金属部品、自動車部品、ガラス光学部品の洗浄分野では塩素系の塩化メチレンが多く使われている。
(4)電機・電子分野
  電機・電子分野は業態が多様であり、溶剤の使用形態も多種多様である。
(5)シンナー業界及びリサイクル業界について
  シンナーは希釈剤、薄め液として、塗料、インキ、接着剤などを塗りやすくする目的や洗浄目的に使用される溶剤で溶剤の混合物が使われる。これらを専門に扱うシンナー業界があり、前記以外にも金属表面処理剤、電子材料用溶剤向け、剥離剤など、多岐多様な顧客のニーズに合わせて溶剤を供給している。また、廃溶剤を回収し、リサイクルメーカーに委託、再精製された溶剤を回収先へ戻したり、ブレンドして、洗浄剤用など他用途への販売活動も行なっており、溶剤のリサイクルに関しリサイクルメーカーとともに重要な役割を果たしている。代表的なシンナーメーカー、リサイクルメーカーの工場所在地をまとめた。

4.溶剤の回収、再資源化技術
 溶媒回収コストのケーススタデーを行い、酢酸エチルの回収例では焼却処理するより回収・再利用する方が経済的に有利なことを示した。その他、溶剤蒸気の回収、排水からの溶剤回収、溶剤蒸気の濃縮、溶剤再生の技術の代表的なものをいくつか紹介した。

5.溶剤の回収、再資源化の推進に向けての提言
 本調査に基づく提言をまとめた。




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