使用済ガラス研磨剤である酸化セリウムを再利用するため、高勾配磁気分離法と磁気アルキメデス法を併用することで再生が可能であることを示した論文です。
液晶パネルやガラス等の研磨用酸化セリウムは、ほとんどを輸入に頼っており、近年、その入手が困難になっています。このため、使用済研磨剤の再生の手法を開発することが当該分野で重要な開発事項となっています。またこの手法の確立は環境負荷の低減に大きく寄与すると期待されています。
研磨用酸化セリウムは水に懸濁されて使用され、研磨後においては、排水処理プロセスで処理されます。処理された使用済酸化セリウムはガラス研磨屑とともに凝集剤(鉄系凝集剤)で凝集した形態で存在しています。酸化セリウムを再利用するためには、鉄系化合物粒子との付着を解消するとともに、それを除去する必要があります。本研究では、pH 調整によって凝集したスラッジを分散させるとともに、超電導磁石を用いた高勾配磁気分離法によって、鉄系化合物粒子を除去しました。分離のための最適条件を、計算とモデル実験によって検討しました。さらに、鉄系化合物粒子分離後の溶液からガラス研磨屑(シリカ粒子)を分離し、酸化セリウムの回収を実現するため、磁気アルキメデス法を利用し、高効率な回収を実現しました。
なお、凝集剤の種類によってはアルミナ粒子が混入しますが、磁気アルキメデス法で分離可能であることも実証しています。この研究によって、酸化セリウム粒子を研磨剤として再利用できる可能性が示されました。
当該研究の成果を基にガラス研磨廃液からの酸化セリウムの回収について、株式会社マエダマテリアルと共に独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の希少金属代替・削減技術実用化開発助成事業に申請し、2011年に採択されています。

①ph調整を行い、試料の分散を行う。
②超電導高勾配磁気分離により鉄の分離を行う。
③鉄を除去した試料に常磁性作業媒体(塩化マンガン)を加え混合する。
④超電導磁石で磁気アルキメデス分離を行い、シリカ、アルミナを浮上分離させて、酸化セリウムを回収する。
使用済み研摩廃材からの酸化セリウム回収フロー図
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