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CJCトピックス

平成23年度「資源循環技術・システム表彰」

財団法人クリーン・ジャパン・センター会長賞受賞テーマの概要

(1)環境テクノサービス株式会社

■ 建設発生土のリサイクル

 これまで建設発生土は転用に向いている第1、第2種建設発生土を除くと埋立処分等されることが多くありました。とりわけ高含水軟弱土の性状を呈している場合、転用されることなく埋立処分場に処分等されるのがほとんどでした。このため埋立処分場の確保が難しくなり、不法投棄などの問題が起きたり、山砂・海砂・川砂などのバージン材による埋め戻しが必要となったりするなどの問題がありました。

 受賞者は、従来再生が難しいといわれてきた高含水軟弱土や高粘性土を、高品位の埋戻し材や盛り土材として再利用できる技術を開発し、発生土の処分量を低減させています。

 これは固化剤に生石灰のみを添加し製造するのではなく、強度発現性の優位性をもつ石膏を添加し改良土を製造したものです。この石膏には建設副産物の一つである廃石膏ボードをリサイクルした再生石膏を使用しています。この技術をシステム化した「発生土再利用システム」を活用して建設発生土や河川、湖沼、港湾の底泥処理、その他、土と環境に関する幅広い事業を全国的に展開しています。

発生土再利用システム

発生土再利用システム

(2)株式会社 真人

■ 廃石膏ボードのマテリアルリサイクル事業

 建築解体時の廃材等として搬出される廃石膏ボード(建築用内装材)は、その多くが産業廃棄物として処分され、最終処分場に埋め立てられています。現在、廃石膏ボードは紙を分離しても安定型処分場には埋め立てることが禁止されているので、費用の高い管理型処分場での埋立を避けるべく、適切なリサイクル用途の開発が強く求められています。国内の新築系廃石膏ボードの6~7割が石膏ボード原料として再利用されているのに対し、解体系廃石膏ボードの実績は数%と推察されています。

 受賞者は、廃石膏ボードを破砕・分離してロータリーキルンで焼成し、中性固化材(地盤改良材)用の製品(石膏粉)として再生利用する循環システム(収集運搬、中間処理、製造販売)を構築したものです。

再生石膏中性固化材処理工程

再生石膏中性固化材処理工程

(3)株式会社岩井化成

■ 廃ポリエチレンのリサイクル循環システムの構築

 事業者が廃ポリエチレンを「産業廃棄物」として処理する場合、排出された廃ポリエチレンは固形燃料にされたり、そのまま焼却処分にされたりすることが多くあります。

 この場合、廃ポリエチレンは不要になった「廃棄物」として排出されたのであり、有価資源として回収、利用されたのではないので、事業者の廃棄物排出抑制効果がないばかりでなく、排出物の自社有効利用にもなりません。受賞者は、他社工場等で廃棄された廃ポリエチレンを有価物として回収し、再生原料化、再生シート化を経て、ごみ袋や梱包袋に再生し、排出事業者自身に還元しています。

 受賞者は従来から、インフレーションフィルムメーカーとして、ごみ袋やポリエチレン袋を製造していたので、再生商品をつくる設備や技術を保有するとともに、廃ポリエチレンの産業廃棄物中間処理業の許可を取得していることにより、廃ポリエチレンのさらなる分別や原料の特性などの把握にも優れ、再生商品化を可能にすることができました。また、再生商品はバージン原料で作成した商品より価格も安いため(国内製造での比較)、循環商品としての利用が可能となったものです。

リサイクル循環システム

リサイクル循環システム

(4)ナカバヤシ株式会社

■ 機密書類の出張細断サービス

 オフィスでは、業務上、技術文書、経理書類や顧客の個人情報にかかわる文書など、機密性の高い文書が日々発生しますが、これらの機密文書の多くは一定年限保管された後、排出されるのが通例です。これらの文書は一度に大量に排出されるが故に、小型のシュレッダでは処理できず焼却されているケースも多くあります。受賞者は、このような機密保持とリサイクルの課題を解決するために、高速細断・高圧縮減容装置を搭載した運搬車を開発し、さらにその運搬車で事業所を訪問して機密保持の立ち会い確認を受けながらその場で機密文書を細断・圧縮、製紙原料会社に持ち込む機密書類の出張細断サービスを全国展開しています(66 拠点:平成23年8月現在)。

機密書類の出張細断サービスの流れ

機密書類の出張細断サービスの流れ

(5)横浜ゴム株式会社 研究本部研究部

■ 空気入りタイヤにおけるインナーライナーゴム使用量低減

 タイヤ部材の中でも空気圧保持機能を担うインナーライナーと呼ばれる部材は、一般的にはゴムの中で最も機能の高いブチルゴムを中心にした配合材が用いられています。自動車の使用時において空気圧と燃費には相関があることが知られており、ブチルゴムの使用量を低減すると製造時の省資源化は達成できますが、自動車使用時に資源消費量が増えるという課題があります。タイヤにおいては製造時よりも使用時のCO2排出量が大きく、このような方法はトータルの省資源化に対しては逆効果となります。空気圧保持機能を大幅に高めるためには、高バリア性樹脂の利用が考えられます。しかし、高バリア性樹脂は一般的に弾性率が高く壊れやすいため、タイヤのような大変形が無数に繰り返される製品には使用できません。そこで受賞者は高バリア性樹脂にゴムを複合化させる技術に着目し、樹脂中にゴムが高体積率で微細分散した熱可塑性エラストマーを開発することによりこれらを解決しました。樹脂をマトリクスとすることで樹脂のバリア性を生かすことができ、一方、ゴムを高体積率で微細分散させることで弾性率を低減、タイヤ部材としての耐久性を持たせることができました。

タイヤ構造

タイヤ構造

成果の概要

インナーライナーの厚み1/10
タイヤ重量の軽量化3~4%
受賞者生産タイヤに
占める新タイヤの比率
0.3%
(2010年度)
合成ゴム低減量約57t/年
(2010年度)

*軽量化と空気機能向上が両立するよう調整

ゴム/樹脂動的架橋型熱可塑性エラストマー

ゴム/樹脂動的架橋型熱可塑性エラストマー

タイヤエア漏れ評価結果

タイヤエア漏れ評価結果

(6)シャープ株式会社

■ 自己循環型マテリアルリサイクルが可能なバイオプラスチックの開発

 バイオプラスチックであるポリ乳酸(PLA)は、供給安定性、経済性などでは優位性はあるが、化石由来プラスチックのABS(注1)等と比較して耐久性、リサイクル性が劣っているほか、成形性、衝撃性などに課題があり、耐久消費財への採用は限定的なものになっています。受賞者は、このような状況のなか、化石由来プラスチックの多くがマテリアルリサイクルされていることを踏まえ、バイオプラスチックにおいてもマテリアルリサイクルは必須であり、焼却処理を前提とした材料設計・製品設計には課題があると考えました。PLA とABS は組成が大きく異なるため単純ブレンドでは層間剥離を生じ均質な材料はできないことから、PLAとABSの相容化についての検討を行い、GMA、PMMA(注2)を添加、さらにリサイクル性向上のために加水分解抑制剤により耐久性を付与し、繰り返しマテリアルリサイクルが可能なPLAとABSのバイオプラスチックブレンド材料を開発しました。

 注1:ABS(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン共重合合成樹脂)

 注2:GMA(グリシジルメタクリレート)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)

開発材料(ABS-PLAブレンド材料)の特性

引張強度
(Mpa)
曲げ強度
(Mpa)
曲げ弾力率
(Mpa)
Izod
衝撃強度
(kJ/m2
面衝撃強度
(cm)
流動性
(MFR)
(g/10min)
開発材料5676240023200<53
従来
バイオ材料
5171230072365
現行材料
(ABS樹脂)
396222001914346

相容化による耐久性の比較(物理保持率)

相容化による耐久性の比較(物理保持率)

開発材料を使用した携帯電話用卓上ホルダー

開発材料を使用した携帯電話用卓上ホルダー

開発材料の資源循環イメージ図

開発材料の資源循環イメージ図



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