cjc | 1月号-3
 
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平成19年度報告

  わが国の大気へのVOC総排出量の約70%を占める「溶剤系VOC」を対象として、
  ①VOC排出施設の現状、②VOC回収・再資源化技術(装置)の現状と課題、③今後開発すべきVOC回収・再資源化技術(装置)の要求仕様等について調査研究を行ったものです。
  溶剤は、塗料・接着剤等の溶解、希釈や金属・半導体等の洗浄に使用され、その年間使用量(消耗量)は約230万トンと推定されており、このうち約半分にあたる120万トンがVOCとして大気に放散されています。
  溶剤を大量に使用するプロセスとして、ラミネート加工、粘着剤製造、グラビア印刷(出版、特殊)、塗装、工業洗浄、化学品製造等が上げられ、これらを中心とした産業に対し法規制と業界の自主的な取組みによって、平成22年までに平成12年のVOC排出量の30%削減を達成しようとしています。
  従来のVOC排出抑制技術は焼却が主体であり、資源の有効利用と温室効果ガス排出抑制の観点から今後は回収・再資源化(リサイクル)に重点を移すべきと考えます。
  以下に報告書の概要を紹介いたします。

  (1)VOC排出施設に関する調査
  ・上記に示した溶剤を大量に取扱う産業では年間数十トンから数百トンの溶剤がVOCとして
   大気に放出されているケースがある。
VOC表
年間稼動時間3,600hrとした時の年間溶剤排出量
時間当たりの排出量(kg/hr) 100 75 50 30 20 10 5 1
年間排出量(t/y) 360 270 180 108 72 36 18 3.6

  ・単一溶剤系では回収・再利用の例があるが、混合溶剤系では回収されている例はほとんどない。
 <単一溶剤系でVOCが回収・再利用されている例>
  ・出版グラビア印刷(全社で100%回収・再利用されている:トルエン溶剤)
  ・ラミネート加工(酢酸エチル)、粘着テープ製造(トルエン)
  ・工業洗浄では、最初にフロン規制による代替フロン、塩素系への転換が行われ、
   その後の規制強化に伴ない塩素系から非塩素系有機溶剤への転換が図られ、
   これらの過程で溶剤の回収再使用が広く行われるようになった
 <混合溶剤でVOCが回収再利用されている例>
  ・粘着テープ(VOCを回収し、特定成分を蒸留分離して利用している例がある)
  ・特殊グラビア印刷(建材化粧紙で回収・再利用の例がある)
 <回収例がまだない分野>
  ・特殊グラビア印刷(プラスチックへの印刷工程ではまだ溶剤回収実施例がない:混合溶剤系)
  ・工業塗装(塗装ブース、乾燥設備ともまだ実施例がない:混合溶剤系)

  (2)VOC回収・再資源化技術(装置)に関する調査
   現在使われているVOCの回収・再資源化装置について概略図等を示し説明している。
  ・工業用洗浄装置では、高濃度で排ガスが捕集されている。
   小風量の場合は冷却凝集方式(加圧深冷凝縮方式を含む)が使われ、
   風量が大きくなると活性炭吸着装置が使われている。
  ・移動式の吸着槽を貸し出し、溶剤吸着後にレンタル業者が引取って脱着する方式(主に塩素系溶剤)
   が一部の地域で行われている。
   この方式は低濃度、小風量の発生源に対して適用できる。
  ・大風量のVOC発生源に対しては吸着方式が使われている。
   又メーカーにより吸着材形状等の工夫が見られる。
   脱着の方式はスチーム、窒素の使用や、圧力スイング等が行われている。

 (3)今後開発すべきVOC回収・再資源化装置の要求仕様等の検討
   本調査を元にVOC発生事業者から求められる回収装置について述べている。
  ・既設設備の乾燥機排ガスを小風量、高濃度で回収装置へ導入するために、乾燥機メーカー、
   エンジニアリング業者、及びVOC回収装置メーカーの協調による設備の改造検討が必要である。
  ・単一溶剤を経済的に回収し、回収装置の普及を図るために一層の装置の
   小型・低価格化が必要である。
  ・溶剤回収中継センターを設け、中小事業者が回収した混合溶剤を収集・中継し、
   更に溶剤再生事業者等と協同で精製、精製溶剤の販売を行う
   溶剤の回収・再利用支援システムの構築が必要である。
  ・混合溶剤の再利用先開拓を目的として、
   回収実験を行い、顧客の品質要求事項や品質目標を明確にする調査研究が必要である。

 (4)調査研究の今後の課題及び展望
乾燥機  ・単一溶剤の回収メリットのPR
   単一溶剤の場合、資源価格の高騰によりコスト対メリットの関係が
   従来の判断基準から大きく変化している。
   回収メリット等の情報提供を通じてVOCの回収・再利用への
   働きかけを業界関係者に継続して行っていくことが重要である。
  ・回収溶剤の再利用支援のための社会システムの構築
   混合溶剤の場合は、回収溶剤が付加価値を失わないで使う道を
   開拓することが必要で、事業者、業界を跨った広範な支援体制が
   必須であり、そのためには、関係事業者団体を中核とした
   回収溶剤再生のための中継センターと運営システムが必要である。
図

EU廃棄物輸送規則

  本書は、欧州連合(EU)が2006年に制定した廃棄物の輸送に関する規則の仮訳です。
  本規則では、①EU加盟国間の廃棄物輸送、②EU加盟国内の廃棄物輸送、③EUから第三国への廃棄物輸出、④第三国からEUへの廃棄物輸入、並びに⑤EU内における廃棄物の通過(トランジット)に関して、以下の事項を定めています。
  (1)廃棄物輸送の全段階における適正な取扱いを確保・強化する措置
  (2)バーゼル条約に基づく有害な廃棄物の輸出禁止に係る規則
  (3)途上国に対するリサイクル資源(非有害物)の輸出の適正化に関する規則、等
  あわせて本書には、上記(3)の措置を強化するために2007年11月に制定された本規則の付則を掲載しています。
  この付則には、EUからOECD非加盟国に有害でないリサイクル資源を輸出する際の詳細規定として、国別に①輸出が禁止される品目②事前通告および同意が必要な品目、③相手国に管理規則が無い品目、④相手国の法律に基づく管理手順が義務付けられる品目を定めるなど、望まない廃棄物の受け入れから途上国を保護する方策が盛り込まれています。
  現在、EU加盟各国では本規則に基づく国内法の制定・改正が進められており、今後の動向が注目されます。
  本書は若干の在庫がありますので、入手ご希望の方は下記にお問い合わせ下さい。

地球   〒107-0052 東京都港区赤坂1-9-20
   第16興和ビル北館6階
   財団法人クリーン・ジャパン・センター
   環境リサイクル情報センター
   電話:03-6229-1031


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