cjc | 4月号-3
 
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平成19年度調査研究報告
NMRを活用した高度リサイクル
  NMRとは核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance)の略称です。通常、日本語でも英語でもNMRと略称だけで呼ぶことが多い。本調査は、NMRによる測定技術を活用して、廃棄物中の金属元素等や分子構造等に焦点を当てて、3R技術の高度化を図ろうとするものです。
  NMRは、その信号の性質が物質・分子ごとに特異的に定まっていることから、物質(分子)の構造解析ができる画期的な装置です。しかも、他の測定法では困難とされる廃棄物の焼却残渣やスラグ、石炭灰などの非晶質材料の元素やその結合状態といった構造分析を得意とする。
  これまで3R分野では、材質評価等に利用されてきているが(劣質石炭の改質プロセスや、高分子材料の再生利用材の評価など)、NMRを本格的に活用した例は少ない。このため、3R分野におけるNMR装置が活用されている事例や、NMRの特性を活かした適用可能性について下記のごとく調査を行った。


930MHzNMR○リサイクル技術の現状及びNMR技術の現状
  リサイクル技術の分類・現状のまとめ、NMRの原理・装置・分析技術

○NMRの利用・開発動向に関する現状調査
  NMR装置の利用状況、NMR装置を活用したリサイクル技術に関する
  実態調査、3Rに応用可能なその他のNMR技術

○現状分析
  アンケート調査等からのNMR利用リサイクル技術の抽出(貴重な資源
  やリサイクルを阻害する微量物質の構造分析等による技術開発の方向
  など)、調査結果のまとめ

○今後の展開
  NMRを活用した高付加価値リサイクル技術(資源の高度な有効利用、
  材料・機器の機能評価、長寿命化などの技術開発に寄与)、
  3Rに必要なNMR装置

NMR計測例

  その結果、①資源の回収、②製品欠陥・材料劣化の判定、③有用物質・有害物質の抽出技術、④低品位な石炭の有効利用技術、⑤プラスチック・ゴム・ガラス等の架橋構造の解明、⑥材料固有値を明らかにすることによる使用済み材料の識別等にNMR活用の可能性が見出された。

  次のステップとして、使用実績を積むことによるデータの整備と解析が早急な課題である。また従来のNMRは、薬品など有機分子の溶液測定に対して最適化することを目的に発展してきた経緯があり、3R技術に適したNMR装置の検討が必要である。リサイクル用NMRとしては、現場で使用しやすいオンサイトNMRやイメージで表示するイメージングNMR、さらに廃棄物は複雑な成分が混じった組成を有することから、多くの元素(核種)を捉えられる高磁場NMRの開発も重要な検討課題です。


副産物発生状況調査
  本調査は、経済産業省の委託を受けて、当センターが実施したもので、製造業・電気業、ガス業の事業所の業種団体を経由して集めた副産物(有価発生物を含む産業廃棄物)の種類ごとの発生、中間処理(減量)、再資源化、最終処分の平成18年度実績データを業種別にとりまとめたものです。また、団体経由データでは十分なデータが集まらない業種については、当センターから直接事業所に依頼して調査しています。
  全国の全事業所を対象とした調査ではないので、製造業の事業所については、調査の回答に所属する産業分類(再分類)と「製造品出荷額」を記入いただき、平成19年の「工業統計」の産業分類別の出荷額(全国計)のデータに対するカバー率を算出し、業種別の拡大推計を実施しています。

1.調査の概要


  製造業・電気業・ガス業合計の副産物発生量は、およそ1億3千万トンでした。発生量合計のうち、約80%が再資源化され、15%が中間処理により減量され、4.5%が最終処分されたという結果になっています。17年度実績に比べ、発生量、最終処分量がやや増加しています。一方、中間処理量、再資源化量も増加しており、生産活動の拡大によるものと思われます。

推移

2.発生量の多い6業種の年次別の推移

工場  発生量の多い6業種は鉄鋼業、パルプ・紙・紙加工品製造業、化学工業、電気業、輸送用機械器具製造業、食料品製造業です。発生量の大きい業種は、いずれも最終処分量は2~5%となっており、業界挙げての対策が進捗していることがうかがわれます。



表-1 発生量の多い6業種の発生・中間処理減量・再資源化量・最終処分量の推移 (単位:万トン)
業 種 副産物量 15年度 16年度 17年度 18年度
鉄鋼業 発生量 6,739 5,771 5,634 5,971 100.0%
中間処理減量 51 52 58 70 1.2%
再資源化量 5,386 5,590 5,442 5,753 96.3%
最終処分量 139 129 134 148 2.5%
パルプ・紙・紙
加工品製造業
発生量 6,383 1,023 1,000 1,058 100.0%
中間処理減量 5,805 430 409 412 39.0%
再資源化量 506 519 539 585 55.3%
最終処分量 72 74 51 61 5.8%
化学工業 発生量 1,938 1,063 976 1,049 100.0%
中間処理減量 1,347 552 467 510 48.6%
再資源化量 400 362 349 374 35.6%
最終処分量 191 149 159 165 15.8%
電気業 発生量 1,024 1,082 1,069 1,019 100.0%
中間処理減量 64 32 6 2 0.2%
再資源化量 806 940 994 983 96.5%
最終処分量 154 110 69 33 3.3%
輸送用機械
器具製造業
発生量 799 706 677 812 100.0%
中間処理減量 148 43 26 38 4.7%
再資源化量 636 654 644 756 93.1%
最終処分量 15 9 8 18 2.3%
食料品
製造業
発生量 1,876 580 533 100.0%
中間処理減量 1,536 203 214 40.1%
再資源化量 304 345 306 57.3%
最終処分量 36 32 14 2.6%
注)平成18年度の各業種ごとの右欄は、発生量に対する最終処分量等の比率

3. 副産物の業種別・種類別順位

  今回の報告書では業種別に副産物の発生量・再資源化量・最終処分量の順位付けを行っています。その内、発生量の大きい順に並べ12業種を下記の表に示しました。また、発生量の多い副産物上位3位までを抜粋して紹介しました。プラスチック製品製造業を除き、副産物の上位の3品目で概ね80%に達しており、それぞれの業種の特徴が出ています。
表-2 発生量上位12業種における発生量の大きい副産物 (単位:万トン)
発生量計 1位 2位 3位
鉄鋼業 5,971 鉱さい 4,583 76.7% ばいじん 793 13.3% 金属くず 352 5.9%
パルプ・紙・
紙加工品
製造業
1,058 スラッジ 589 55.7% 紙くず 272 25.7% ばいじん 89 8.4%
化学工業 1,049 スラッジ 434 41.3% 廃 酸 167 15.9% 廃 油 158 15.0%
電気業 1,019 ばいじん 730 71.6% スラッジ 209 20.5% 燃えがら 75 7.3%
輸送用機械
器具製造業
812 金属くず 550 67.8% 鉱さい 151 18.6% 廃プラスチック類 27 3.4%
食料品
製造業
533 スラッジ 207 38.8% 動植物性残さ 207 38.8% 廃 酸 29 5.4%
窯業・
土石製品
製造業
464 スラッジ 168 36.3% ガラス・
コンクリート・
陶磁器くず
146 31.4% がれき類 50 10.7%
非鉄金属
製造業
460 鉱さい 372 80.8% スラッジ 31 6.8% 廃 酸 17 3.6%
金属製品
製造業
346 金属くず 138 40.0% 廃 酸 83 23.9% スラッジ 56 16.3%
印刷・
同関連業
270 紙くず 216 80.2% 廃プラスチック類 34 12.5% 廃 油 9 3.3%
飲料・
たばこ・
飼料製造業
233 動植物性残さ 153 65.7% スラッジ 35 15.2% 廃 酸 17 7.1%
プラスチック
製品製造業
191 廃プラスチック類 12 6.3% 廃アルカリ 11 6.0% 廃 油 11 5.6%
注)数値の左段:発生量、右段:発生量全体に占める割合

4. その他の解析について


  平成19年度調査では、前年度までの調査結果その他を合わせて次のような分析を行っています。
○ 副産物(産業廃棄物・有価発生物)の集計結果、○副産物の業種別・種種類別順位、○副産物(産業廃棄物・有価発生物)発生・中間処理・再資源化・最終処分量の年度別推移、○副産物(産業廃棄物・有価発生物)発生・中間処理・再資源化・最終処分量の増減要因について、○産業連関表を用いた調査・分析、○産業間取引の実態調査、○副産物をリサイクルして得られた製品(副産物製品)の事例・利用量・利用者の状況

  なお、当センターが集計したのは、製造業・電気業・ガス業の生産活動に伴い発生する副産物は有価発生物+産業廃棄物であるのに対し、環境省が「全国の産業廃棄物の排出状況」として発表しているのは、建設業のがれきや農業系の動物のふん尿等を含んだ産業廃棄物です。
  さらに、当センターはスラッジ(脱水後の汚泥)を調査していますが(16年度実績以降)、環境省発表データは「汚泥(水分含む)」で把握しています。これらを含めて産業廃棄物は年間の4億トン発生するとされています。
  このように、調査対象や方法がかなり異なりますので、単純な比較はできません。それぞれの違いを理解した上でのご利用が必要です。


3Rの進捗状況調査

  今後3Rシステム化を図っていくべき品目を明らかにするため、「日本標準商品分類(平成2年6月改訂)」の商品分類に沿って経済産業省所管の商品に関する3Rの進捗状況を整理したものです。商品分類は、商品品目の特質に応じて必要な場合には細分の分類で整理しています。
  日本標準産業分類において、総計99品目ある対象の商品品目のうち、約80の商品品目について、商品の特徴(構成製品の概要、次工程製品との関連等)、生産量(生産額)、3Rシステム化の状況(一部商品について特別の取組みが行われている場合はその商品群についても解説)、特徴、回収再資源化状況、事業者の取組み、3Rシステム化採択実績、課題についての3Rの観点から概況を示しています。
  調査を通し各大分類毎に把握できた主要事項は次の通りです。

(1)「大分類1-粗原料及びエネルギー源」は、全ての商品の粗原料であり製造過程で使用するエネルギー源であることから3Rシステム化対象にはなりえない。

(2)「大分類2-加工基礎材及び中間製品」は、この商品単独で市場に出回ることは少なく他の商品に姿を変え部材や要素品として使用されるため使用された商品で3Rシステム化を図ることになり電線等一部を除き3Rシステム化対象からは外れる。

(3)「大分類3-生産設備用機器及びエネルギー機器」は、ほとんどが事業に伴い使用されるもので長寿命であり、法制度に基づくものも含め適正保守がなされ長期使用されるものが多く、また、高額のため中小機器は中古市場も存在する等廃棄されることは少ない。一方、廃棄されても金属製であることが多いため既存の3Rシステムで回収・再資源化されることから一部の処理困難物を部材に抱える建設機械などを除き3Rシステム化は不要と思われる。

(4)「大分類4-輸送用機器」は、法制化された自動車、業界自主回収の自動二輪車を除き前項「大分類3」と同様のことがいえる。但し、自転車は、放置自転車等で社会問題化している。

(5)「大分類5-情報・通信機器」は、事業所所有のものは「大分類3」と同様のことがいえるが、個人所有の例えば携帯電話やパソコンなど業界の自主回収システムはあるものの様々な事情から回収が思わしくない。

(6)「大分類6-その他の機器」は、「大分類4、大分類5」と同様に事業所で使用される機器は問題ないと思われる。個人使用の汎用機器については、家電リサイクル法対象機器は法によって回収・再資源化義務があるが、多くの機器はシステム化されず効率的に回収・再資源化されていない。

バットとグローブ(7)「大分類8-生活・文化用品」は、ほとんどが個人所有で大量消費・大量廃棄されるものが多い。家庭から排出される容器包装については法制度化されているが、本体そのものは廃棄されれば大部分一般ごみ(粗大ごみ含む)として市区町村の回収となる。業界等で自主回収を検討しているものもあるが機能しているものは少ない。

  また、法制度化された商品を除く経済産業省所管商品品目の3R取組み状況を類型化すると次表のようになります。


法制度化された商品を除く経済産業省所管商品品目の3R取り組み状況を類型化
事業者、業界の自主的回収・再資源化システムが構築されている商品(有償、逆有償いずれでも) 潤滑油、タイヤ、紙、ガラス、瓦、容器類、パソコン、携帯電話・PHS、複写機、消火器、自動二輪車、小型二次電池、自動車用等の鉛蓄電池、小型ガスボンベ、パチンコ遊技機等、繊維製品(ユニフォーム等)、電線、建設資材(石膏ボード、木質ボード、瓦、グラスウール、ロックウール、塩化ビニル管・継手等)、FRP浴槽、レンズ付きフィルム・現像液等
有価物として商業ベースの回収・再資源化システムの成立している商品 タイヤ、紙、鉄及び鋼、貴金属、非鉄金属、金属加工製品、容器類、原子力機器の一部を除く生産設備用機器及びエネルギー機器、自動車及び二輪車を除く輸送用機器、パソコン・携帯電話・PHSを除く情報通信機器、その他機器、娯楽装置、楽器等
回収・再資源化未実施商品で資源価値のあると思われる商品 タイヤなどを除くゴム製基礎材、紡繊基礎製品、家具類、農林・漁業用機器、医療用機器、理化学機械及び工学機械、衣服、医療用品及び関連製品(家庭用)等
資源価値が低い等から廃棄物の適正処理の観点から取り扱うべき商品 革製基礎材、化学薬品、原子力機器、台所用品・食卓用品・履物・衛生設備用品(家庭用)・医薬品・家庭用化学製品・玩具・スポーツ用具・文具等の多くの生活・文化用品等

トランペット  市場に多く出回り資源として有用なものは、その殆どが経済原則に従い再資源化されるシステムが社会的に且つ必然的に構築されることになります。
  また、経済性では対応できない商品については、希少資源等の有効利用や廃棄商品の適正処理の観点から、法制度化されたものはもちろん、その他の商品でも業界団体等が主導する回収・再資源化システムが概ね機能し効果をあげていることが調査できました。
  今後は、各商品について個々に詳細に点検していくことが必要段階となっています。



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